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大阪簡易裁判所 平成7年(ヘ)1207号 決定

右申立人からの別紙記載の証券(以下、「本件株券」という。)にかかる頭書事件について、平成七年一二月一二日その公示催告を行ったところ、平成八年七月二日株式会社東京三菱銀行から権利の届出及び株券の提出がなされたので、同年八月一三日の公示催告期日に調べたところ、右権利の届出人の所持している株券と本件株券との同一性が確認され、同証券の所在が明らかとなった(なお、申立代理人も同一性があることを争わない。)。

申立人代理人は、権利の届出人は本件株券を略式質権に基づき所持していると主張するが、申立人は権利の届出人との間で、質権設定の合意もしていなければ、株券を交付した事実もない。従って権利の届出人が主張する略式質権の存否についての裁判が確定するまで公示催告手続きを中止する旨の決定(民訴法七七〇条)をすべきである。仮に権利の届出人の主張が認められるとしても、権利の届出人は略式質権に基づいて本件株券を所持しているに過ぎず、いまだ本件株券の完全の所有権を取得しているわけではないから、権利の届出人に対する関係で留保付除権判決をし、その余の届出をしなかった不特定の利害関係人との関係で通常の除権判決(民訴法七七〇条)をすれば足りる、というが、同条の規定は、証券を提出しないで権利の届出をした場合、又は提出された証券の同一性ないし真実性につき争いがある場合の規定と解されるから、前記のように権利の届出人の所持する株券と本件株券の同一性が認められ、その所在が明らかとなった以上、同条を適用する余地はないというべきである。

よって、本件申立は理由がないから、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件除権判決の申立てを却下する。

大阪簡易裁判所

(裁判官 重富純和)

別紙 証券の表示

銘柄 旭化成工業株式会社

券種・枚数 一〇〇〇株券 一一枚

記号番号 一九C九〇八九三

一九C 一三三八〇一

二〇C 八〇三三〇、八〇三三一、八〇三三二、

二一C 七〇二九九、七〇三〇〇、七〇三〇一、七〇三〇二

TC 三五〇七九八

あC 一〇八三三四

一株の金額 五〇円

最終名義人 申立人

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